米司法省は、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長に対する刑事捜査を打ち切ると発表した。これにより、同氏の後任としてトランプ氏が指名した候補への上院審議が停滞していた問題が解消した形である。
米連邦検事のジーニーン・ピーロ氏は22日、Xで決定を公表した。同氏は2日前に、裁判所の大陪審召喚令状差し止め命令に対し控訴すると表明していたが、態度を一転させた。
今回の捜査は1月に開始された。ピーロ氏の事務所は、FRB本部の改修に関する2025年6月のパウエル氏の上院証言をめぐり、大陪審調査を行った。
検察は、パウエル氏がワシントンのエクルズビルとイーストビルの改修工事規模について上院議員らを誤認させたかを調べた。工事費用は当初の約19億ドルから約25億ドルへと膨らんだ。物価上昇やアスベスト・鉛除去、歴史的保存要件が主な要因である。起訴は見送られた。
ジェームズ・ボーズバーグ米連邦地裁首席判事は3月13日、司法省の召喚状を無効とし、4月3日にもこの判断を再確認した。同判事は「犯罪と断定できる証拠はほぼ皆無」と指摘した。
また、同判事は召喚状の目的について「名目上であり、パウエル氏の金利決定に圧力をかける意図があった」と指摘。ピーロ氏はこの見方を否定し、4月22日に控訴の意向を示していた。
それから2日後、同氏の事務所は工事の費用超過をFRB監察官室に付託した。同室は調達記録へのアクセス権を持つ内部監査機関である。
ピーロ氏はこの声明を22日夕にXへ投稿した。
捜査の打ち切りにより、パウエル氏の後任候補であるケビン・ウォーシュ氏への政治的障壁が取り除かれた。同候補は5月15日に現議長の任期が切れるため、トランプ氏により指名されている。上院銀行委員会の共和党ティリス議員(ノースカロライナ州)は、検察側が捜査を断念するまで承認投票を保留していた。
ティリス議員は21日の公聴会で、今回の捜査を「偽物」「無意味」と批判。「5分あれば十分に打ち切れる」とも発言した。
ティリス氏はウォーシュ氏の公聴会でこう強調した。
ウォーシュ氏はブッシュ政権下でFRB理事を務めた経歴を持つ。上院で「トランプ氏の操り人形にはならない」と明言している。同氏が承認されれば、FRB幹部会が6月に開催される直前に中央銀行トップが政権寄りとなる構図となる。
パウエル氏は今回の捜査について、FRBの金利政策への「報復」と公言した。同氏の議長任期は来月満了するが、理事としては2028年まで在任可能とされる。FRBの独立性を守る観点からも、元FRB幹部や複数の市場エコノミストは今回の事案を「ストレステスト」と位置付けていた。
決定は上院銀行委員会の短期日程にも影響する。ティリス議員は、下院が可決済みのデジタル資産市場CLARITY法案(ステーブルコイン報酬の記載条項)を巡る共和党側の交渉責任者も務める。法案の上院審議入りが控えている。
同氏は銀行団体からの意見集約を理由に、CLARITY法案の審議開始を4月から5月に延期させた。ノースカロライナ州銀行協会は、報酬制限強化を求めるロビー活動を推進していた。
銀行側は受動的な報酬の全面禁止、暗号資産事業者は利用実績に応じた報酬維持を主張している。第三者プラットフォーム連動で報酬を認める部分妥協案も浮上したが、合意には至っていない。
ウォーシュ氏の承認が司法省案件に紐付けられなくなったことで、5月11日の週以降に法案審議が再加速する可能性が出てきた。業界グループはさらなる遅延が法的インフラ改革の実現を2027年へ先送りするリスクを警告している。
今後はFRB監察官による改修費用調査とウォーシュ氏の委員会採決が主な焦点となる。パウエル氏をめぐる一連の案件がこのまま終息するかどうかは、監査の結果次第となる見通し。


