英金融紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は4日、ステーブルコイン最大手テザーが当初最大200億ドル(約3.1兆円)を目標としていた資金調達計画を大幅に縮小し、約50億ドル(約7,815億円)規模での調達を検討していると報じた。企業評価額5,000億ドル(約78兆円)という目標に投資家が強い抵抗を示したことが背景にあるという。
テザー社のパオロ・アルドイノCEOはFTのインタビューで、150億〜200億ドルという数字について「目標ではなく、売却の用意がある上限だった」と説明した。同氏は「ゼロを売却しても満足だ」とも述べており、資金調達への積極姿勢が後退している様子がうかがえる。
関係者によると、一部のアドバイザーは調達規模を50億ドルまで引き下げる案を提示している。最終的な調達額は未定で、市場環境や投資家の意向次第で変動する可能性がある。
テザー社の2025年の利益は前年比約25%減となった。ただし利益規模は依然として約100億ドル(約1.6兆円)に達しており、世界の大手銀行に匹敵する水準を維持する。金保有の値上がりにより約80億〜100億ドル(約1.3兆〜1.6兆円)の利益を計上したことも寄与している。
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同社が発行するUSDT
USDTの流通量は約1,850億ドル(約29兆円)に達し、準備資産として米国債などを保有している。
投資家が5,000億ドルという評価額に慎重な姿勢を示す背景には、規制リスクと準備金の透明性への懸念がある。
テザー社は四半期ごとにイタリアの会計事務所BDOによる準備金証明を公表しているが、完全な監査報告書は公開していない。格付け機関S&Pグローバル・レーティングスは昨年、同社の準備金評価を最低ランクに格下げした。理由として、ビットコインや金といったリスク資産への高いエクスポージャーを挙げている。
アルドイノ氏はこれに対し、AI企業の評価額と比較しながら「AI企業はテザーと同規模の利益を上げているが、符号がマイナスだ」と皮肉交じりに反論した。
米国ではドナルド・トランプ大統領が署名したステーブルコイン規制法が成立し、市場環境が整備されつつある。テザー社も今年1月、米国の規制に準拠した新トークン「USAT」をローンチしており、規制対応を加速させている。
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だが規制リスクへの不安は根強く、投資家は慎重な姿勢を崩していない。暗号資産市場全体が過去6カ月で急落したことも、投資判断に影響を与えている。
FTによると、テザー社とアドバイザーは調達条件について協議を続けており、最終的な規模は未定だ。暗号資産市場が回復すれば、投資家の関心が再び高まる可能性もあるという。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=156.3円)

