開催中の「FIN/SUM 2026」で5日、三菱UFJ銀行取締役頭取執行役員の半沢淳一氏が「AI×ブロックチェーン時代に向けた銀行界の取組み」をテーマに講演した。同氏は2025年から全国銀行協会会長を務めており、AIやブロックチェーンを活用した金融インフラの高度化や銀行界の取り組みについて説明した。同協会会長として、日本の成長を支えるための柱を示す中で、ブロックチェーンの可能性にも言及した。
半沢氏は、「時代に即した金融インフラの実現」が必要だと述べ、金融機関がブロックチェーンを活用する意義を語った。そのうえで、金融取引のオンチェーン化が進みつつあると指摘。セキュリティ・トークン(ST)などのトークン化された金融商品に加え、トークン化預金やステーブルコインといった決済手段が整うことで、オンチェーン上で資産と決済が連動する新たな金融ネットワークが形成される可能性があると説明した。
また、国際貿易や越境ECの拡大を背景にクロスボーダー決済の需要が高まるなか、従来のコルレス銀行モデルではコストや送金スピード、透明性といった課題が指摘されていると説明。こうした課題の解決手段として、ブロックチェーン技術を活用した決済インフラへの期待が高まっていると述べた。銀行界でも実証実験や国際プロジェクトへの参加を通じ、検討を進めていると紹介した。
具体例として、信託受益権スキームを活用した3メガバンクによるステーブルコインの共同発行に向けた実証実験や国際決済の高度化に関するプロジェクトへの参画などを紹介。これらの取り組みを通じて、次世代の金融インフラ構築に向けた検討が進んでいるとした。
終盤、半沢氏は、AIとブロックチェーンは「金融の在り方そのものを変える技術」だと指摘。両社の関係については、AIが「意思決定の高度化」を担い、ブロックチェーンが「データの正しい記録・交換・価値移転」を担うと整理。両者は互いに補完し合う関係にあると述べた。銀行業はもともとデータに基づく与信判断や厳格な記録管理を行う業界であるため、両技術との「親和性が高い」と強調した。
そのうえで、技術革新が進む中でも「安心・安全」を前提とした銀行の公共的インフラとしての役割は変わらないと主張。自前主義に陥ることなく、スタートアップやテクノロジー企業との連携を深めながら、日本の成長加速と社会課題の解決に挑戦していく姿勢を示した。
|文・写真:橋本祐樹
